オレが龍なら、アイツは虎よ。
仕事を終わらせ、会社を出ると雨だった。
天気予報は夕方雨だったのを思い出しながら置き傘をさして駅に向かう。
傘を持って人とすれ違う時には、自分の傘を高く上げてスマートな通行を心がけるオレだが、アイツはオレが高らかに掲げたカサよりもさらに高いところですれ違おうと挑みかかってきた。
試してみるかい?
今までオレよりも高く傘を掲げようとして敗れ去った男たちは数知れない。
見たところ同じ背格好だけどオレはオマエよりも、もっと高いところまで行ってのける男なんだよ!
オレはまるで体操選手が競技をはじめる時の合図ように、優雅にそして大胆にその腕を伸ばし、アイツの傘の上を越えようとした・・・
なのに!結局傘がぶつかって、お互いにヘラヘラしながら「すみません」みたいになっておわった。